朝10時頃に安ホテルをチェックアウトし、荷物をまとめて国営バスのオフィスへ赴く。バスでタンジェを経由して国境を越え、一気にスペイン領のセウタまで行こうと考えていたのだ。切符は昨日既に買っていたので(こんなに用意周到なのは珍しい)、たかってくる蝿と一緒に待合室でバスを待つ。時間になってもバスが来なくて多少の不安はあったが、少し話をして仲良くなった爺さんの助けもあり、無事に乗車して予定より10分遅れで出発。やれやれ。
あまり寝ていなかったので、バスの中でウトウト。ふと目を覚ますと、バスが止まっている。休憩か? と思ったが、ここは荒地のど真ん中、さすがにモロッコでもここで休憩は無いだろう。外で数人の男が何か作業をしているのを見て、ようやくバスに何かトラブルが発生したのだと気付く。やれやれ。しかしまだ眠かったので、また眠りに付く。もうこの程度では動じない。どれくらいの時間が経ったのか分からないが、また目を覚ます。まだバスは動かない。さすがに勘弁してくれと思い始めたが、そう思ったところでどうにかなるものではない。いつもなら「まぁいいか、そのうち何とかなる」と思えるのだが、今日は違った。とにかく今日中にモロッコを出ようと決意していたのだ。苛立っている自分に驚いたが、かといってそれを抑えることは出来なかった。
しばらくした後バスは動き出したが、結局大幅に遅れてタンジェまで8時間も掛かってしまった。タンジェに着いたのは夜の8時近くで、今日中にセウタに行く事は無理かな、と思った。少し頭に血が上っていて意地でも行ってやろうとしたが、流石にバスも走っていないし、物理的に不可能だ。安ホテルでも探して明日にしようか、それともセウタ行きを諦めようか、迷った。ヨーロッパに戻るならタンジェからアルヘシラスに戻れば良いわけで、セウタに行かなければならない訳では無い。ただ、出発前からどうしても陸路で国境を越えたいと思っていたし、何よりセウタという街に行ってみたかったのだ。
考えた末にホテルを探そうと決め、既に暗くなったタンジェの街を歩く。すると自称ガイドが寄ってきた。「お前、何処行くんだ? ホテル? それとも、フェリーに乗るのか?」ここでフェリーという言葉が出て驚いた。そこでふと思いつき、「セウタに行きたい」と言ってしまった。この台詞には自分でも驚いた。今の時間から移動するのは非常識だし、物理的にも不可能だと考えていたからだ。無理だろうな、と思っていたら何と、意外にもそのガイドは任せろといった感じでグランタクシー(中〜長距離間を走るタクシーで、普通相乗り)を探し始めた。まじかい。
しばらく経ってガイドが戻ってきて、50ユーロなら良いというタクシーがあると言った。50ユーロ! 通常6人くらいで相乗りするとは言え、いくら何でも高い。しかしこの状況ではあまり強いことは言えない。仕方ないかと思ったが、口を出た言葉は「30ユーロなら乗る」。おいおい、なんで俺はこんなに強気なんだ、そんな事を言ってる状況じゃ無いだろう。当然そのタクシーは去っていった。ガイドも困ったようだったが次のタクシーを探しに言った。4回目くらいに当たったタクシーが35ユーロで良いと言ったが、ここでも30ユーロという主張を通したため交渉決裂。その後も、あるタクシーは値段の折り合いがつかず、あるタクシーは時間が遅いからと言って断り、なかなか見つからない。もう止めようかと思ったら、ガイドが走ってきた。「30ユーロで良いと言っている!」すぐに荷物を入れ、タクシーに乗り込む。ガイドには余っていた20DHを渡した。もっと寄越せと言ってきたが、ノーマネーを連発すると諦めて去っていった。もう少し払っても良かったかな、と思った。チップ目当てとは言え、彼は相当頑張ってくれたのだ。
やっと出発・・・と思ったら、タクシーはすぐに停まって交番のようなところへ。どうやら警察の許可が要るらしい。交番には先客が居て、しかもかなり揉めているようだった。これが日本だったら別に大したことじゃないのだが、モロッコでこの状況は結構怖い・・・。数分後彼らは去ってゆき、パスポートを見せて良く分からない手続きを済ませる。そしてやっと、本当にやっと、セウタへ向けて出発。
Posted by hanzo at March 18, 2006 06:36 PM | コメント (2) | トラックバック (0) | Clip!!
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