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トルコ・イスタンブールA

後から知ったがどうやら新市街のメインストリートらしきところに来ていた。腹は減っているか?と聞かれ、とくに減ってもいなかったが減っていると答えると、じゃトルコ料理を食べようということになり店に入る。何がなんだかわからないがそいつが全部注文してくれた。そいつはちょうどおれと同じ歳でイスタンブール大学に通う大学生。ホテルマネージメントを専攻していて、旧市街にある以前の刑務所を利用した「フォーシーズンズ」ホテルでバイトしているとのことだった。そんでまぁサッカーの話とか、彼女はいるかとか、こういう場合どんな話をするか決まっている。いやどんな話であれ楽しいのだが。料理はケバブと小さくちぎられたパンが混ざっていてそれをヨーグルトソースで食べるのが出てきた。それとオレンジジュース。ほんとに腹は減っていなかったのだが、それはめちゃめちゃうまかった。羊肉の臭みも全くないし、こんなにもヨーグルトが合うのかとびっくりした。オレンジジュースも搾りたてのフレッシュジュースだ。さすが世界三大料理なだけある。庶民レベルの料理がこれほどうまいとは(中国はまずかったが…)。気前よくそいつはおごってくれた。これがトルコ人のもてなしなのかーと感動していた。が、これもその後のフリに過ぎないことを知ったときには時すでに遅し、だった…。
トルコ料理の感動に酔い、そしてなおかつおごってもらったことにうかれて、「トルコビールを飲みたくないか?」と聞かれ、つい「飲みたい」と答えてしまった。そして、じゃついてこいとなり、ちょっと裏通りに入った店に連れて行かれた。階段を下りて地下に行き、コートを預けて暗い店の中に入っていく。入り口近くのテーブルでは女ばかりでかたまっていた。おれらは奥のテーブルに行き、ソファに座りビールを頼む。そして最初は二人だけで乾杯した。トルコのビールは「エフェス」が有名で、軽い口当たりでとても飲みやすくおいしかった。そうこうしてる間に、隣に女が座りだした。おれはこのときまだこの店が「そういう」店だとは全く気づいてなかった。
女たちも酒を頼み、英語やらトルコ語が飛び交いだした。もちろん一番話がわかっていないのはおれだった。ダンスをしたりもした。おれはビール2杯でもういっぱいいっぱいになりあとはつまみやらフルーツやらを食べていた。そう言えば女どもはシャンパンやらワインを頼んでいた。
途中、おれはトイレに立った。用を済ませてトイレから出ようとすると「そいつ」と女の一人もトイレに来ていた。トイレの番人にチップを渡すんだよ、と言われ、おれもあぁそうかそうかというかんじでチップを出す。席に戻ってふとあることに気づいた。これはおごりなのか?もしかしてこれっていわゆるキャバクラじゃねぇ?ふと不安になりそいつに聞いてみるが、「楽しめ楽しめ」としか言わない。おれもその言葉を信じ、その時を過ごした。
そして、そろそろ会計だ、という時にきた。そいつが言うには二人で割り勘だと。まぁ全ておごってもらうわけにはいかないだろうと思い納得した。そして、店の男が伝票を持ってきた。最初、伝票を見たそいつが口で伝えてきた。はぁ?何言ってんだ?と思い、伝票を見せてもらう。と、そこにはとんでもない数の0が並んでいた。数えるのが怖くなる。およそ3750000000トルコリラ。日本円にしておよそ30万円!何度数えてもそうなる。そして一気に酔いが引いていった。そんなに金ない、と言ってもカードがあるだろ、と言ってくる。割り勘だから一人約15万円だと。恐ろしさから体が震えてきた。いや、それより前にこんなとこに連れてきたハッピーバースデー野郎への怒りのほうが先だった。文句を言いたいが英語がでてこない…。もう口をふさがれてるのと何も変わらない。カードでキャッシングして払えと言われ、コートも着ずに雨の降る真っ暗で寒いイスタンブールの夜でATM巡りすることに。もう寒いんだか恐怖なんだかわからないが震えが止まらなかった。おれとそいつと監視役の男二人。走って逃げて日本大使館にかけこむことも考えたが、ここがどこで右も左もわからなきゃ捕まって殺されるだけだと思い、ただ流れに身を任せることにした。しかし、急にキャッシングと言われても、学生の分際が持つクレジットカードで15万円もの大金下ろせるわけないのはわかっていた。それに暗証番号だってはっきり覚えていない。でもなんかしなきゃという焦りからどんどん手はすすむ。が、何度やっても金は出てこない。祈るような気持ちで機械をいじるが答えてはくれない。そして、その監視役の一人がしょうがないといったかんじで帰ろうと言ってきた。金の払えないおれはどうなるんだろう…?6割くらい死ぬことを覚悟した。こんなとこでこんな死に方をするなんて…なんてぶざまなんだと考え、このときほど日本に、平和な元の生活に帰りたいと思ったことはなかった。店に戻り、店の奥のほうにある「ボスの部屋」に案内された。椅子にふんぞり返って足は机の上に置かれ、テレビを見ながらタバコをふかしてる、まさに「ボス」のイメージそのままの「ボスの部屋」だった。周り6、7人に囲まれておれは机の前に立たされた。ボスはそれほど珍しいことではないかのようにおれのことは気にも留めずテレビを見ていた。そしておれはクレジットカードを出し、いわゆる読み取り機に通され伝票がでて来るのを待った。そして、無事に伝票は出てきた。このときの安堵感と言ったらもう…。これで伝票にサインしたら決済は完了。ご丁寧にも本日の日本円対トルコリラのレートまで見せてくれて計算してくれた。15万円強…。もうそんなのはどうでも良く、早くサインして終わらせたかった。
金さえ払えば、とくに暴力をふるうわけでもなく威嚇してくるわけでもなく、いたって紳士的な対応だった。しかし、席に戻ってきたおれはしばらく放心状態だった。恐怖から解放されたこと、一気に15万円も失ったこと、こんなやつにまんまと騙されてついてきてしまったこと…どれも頭の中でふわふわしてちゃんとは考えられなかった。だが、何よりこんなところでの死をまぬがれたことに喜びを感じずにはいられなかった…

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2005年02月02日 01:19に投稿されたエントリーのページです。

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