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モロッコ・イベリア(7)

夜明け前、凄まじい腹痛に襲われて目が覚めた。慌ててトイレットペーパーを持ってトイレに駆け込む。3度往復したが腹痛は治らず。頭もぼーっとするので、熱もあるかもしれない。薬を飲んで横になり、寝付けないので小説を読んだりして過ごす。
昼12時にシングルの部屋へ移動したが、入り口側を太陽が照らしていて、とてもとても暑い。3時くらいまで頑張って寝たが、腹も減ってきたので外に出ることにした。今日はまだ何も食べていないのだ。

街を歩いていると、客引きに声をかけられた。体調は最悪で店を探すのも面倒だったので、付いていくことにした。タジンと水とパンを食べると少しだけ体調は良くなった。食べながらその客引きのモロッコ人と色々な話をしたが、精神的にかなり参っていたので、これで大分救われた。日本から持ってきたたくあんを上げると、とても喜んでくれた(意外と口に合うようだ)。あとで手紙を送ってくれるというので、アドレスの交換もした。ラシッドという名前らしい。
これから砂漠に行くという話をすると、ラシッドは「ジェラバ(服)とサングラスと毛布を持っていくといい。もし工場が空いていれば、そこで半額くらいで買えるよ」と言う。「いくら?」「交渉しだい。メディナでは値下げ出来る。でも、新市街ではfix priceだ。だから俺はメディナが好きだ。」食後案内してくれるというので、付いていくことにした。

迷路のようなメディナの細い道をラシッドと歩く。大きな通りだと遠回りになるらしい。こっちとしても、そのほうが楽しくて良い。ラシッドはメディナについてとても親切に説明してくれた。他にも家族のこと、飼っていた犬や猫のこと、大学で2年間芸術を学んでいたこと、などなど。
ここでふと気が付いた。ラシッドは自称ガイドだ。モロッコには政府に認められた公認ガイドのほかに、非合法な自称ガイドと呼ばれるものが存在する。当然あとでチップと呼ばれる報酬を支払うことになる(半日で150、1日で250DHが相場らしい)。まいったな〜と思ったが、ラシッドはなるべく分かりやすい英語で説明してくれるし、ジョークを言ったり、とにかくとても親切だった。これなら、別にチップを払っても別に悪くない、と思った。うん、悪くない。

運が良く・・・いや、当然のことながら、工場は開いていた。狭い階段を上がり、3階へ。少し待つと、ボブサップのような店主がやってきた。アラブ式の挨拶をし、工場(といっても機織りが1つあるだけ)の説明を受ける。そして別の部屋に通され、ミントティーを飲みながら雑談を少々したのち、絨毯の説明が始まった。いよいよ来たな、という感じだった。
ジュラバのほうは良いデザインのものが1つだけあった。絨毯はとりあえず1つ適当に選び、あとは全て要らないと言った。交渉開始。選んだ絨毯の上に、ボブサップと2人であぐらをかき向かい合う。ボブサップだけに威圧感はものすごい。
まず提示してきた値段は3900DHだった。日本円にして5万円以上だ。馬鹿言っちゃいけない。こっちの金は260DHくらいしか持ってないので、それをアピールしつつ値段を下げようという方針に決定。まず絨毯は別に要らないので諦め、単品で1900DHに。怒るかな、と思いつつも200DHを提示。ボブサップは顔色を変え色々言ってくるが、幸い早口で何を言っているか分からない。すかさずラシッドがサポートに入る。学生だからこれでも安くしてるとか、これは良い品だとか。あくまでも怒っている振りをしているだけのようで、まぁ許容範囲なのだろう。自分の持ち金を見せ必死(な振りで)アピール。そしてついに450DHまで下がった。
これ以上払ったらもう旅を続けられない、俺は貧乏なんだ、と連呼。合計5回くらい同じことを言った気がする。少しずつではあるが、何とか400DHまで来た。もういいか、と思ったがあくまでも強気に370DHを主張。これ以上は払わない、という態度を見せる。ボブサップはしばらく400DHを主張し続けたが、こっちの態度を見て仕方ない、といった感じで折れた。
ジェラバの相場は分からないので、これが良い買い物だったかは分からない。少なくとも、向こうには利益が出ている。モロッコ初心者の日本人がギリギリまで値下げできるほど甘い世界では無いだろう。それでも5分の1まで下がったことには満足した。なら良いじゃないか。結局、自分が満足できるかどうかだ。たかが100円やそこらに固執してどうする?

ホテルに一旦戻り、残りの金をラシッドに渡すと、チップをくれないかと言ってきた。やはり、と思いつつも、残りの金額120DHに30DHだけ足して渡した。半日の相場から考えても問題外に安い値段だが、ラシッドは喜んで受け取ってくれたので逆にこっちが申し訳なく感じてしまった。「もう一度マラケシュに来ることがあったら、さっきのレストランに来てくれ。俺はいつもあそこに居るよ」とラシッドは俺と肩を組んでそう言った。そしてアラブ式の挨拶とともに去っていった。工場から多少のマージンは受け取るだろうが、30DHのチップで納得するガイドなんてまず居ない(と思う)。何にせよ、ラシッドはとても良い奴だった。彼のお陰で旅の不安もかなり和らいだ。すでに買ったジュラバのことはどうでも良くなっていたが(笑)。

部屋に戻ってきたが、体調がまた悪くなっていることに気が付いた。さっきの良い気分は吹き飛び、またナーバスになってきた。旅の途中の病ほど精神に悪いものは無い。プラス思考するにはあまりにも消耗していた。少し腹が減ったが、下痢はまだひどいし外出する気力も残っていなかったので、もう寝ることにした。明日は移動する予定だが、こんな状態で大丈夫だろうか? ミナレットから聞こえるアザーンやジャマ・エル・フナ広場から聞こえる太鼓の音を聞きつつ、寝たり起きたりを繰り返した。

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コメント (1)

岡田:

旅先で体調悪くなるとマジ萎えるよねぇ。とくに旅の序盤だとなおさらナーバスで弱気になっちゃう。だから何ヶ月も旅してる人ってすげぇなぁって思うよ。

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2005年05月01日 00:50に投稿されたエントリーのページです。

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