8時過ぎに起床し、朝食。例によってオレンジジュースが美味い。
シャワーを浴び、日記を書き、出発の準備をして昼にチェックアウト。オレンジジュースのおかげか、体調もかなり良くなった。バスターミナルに行く途中、スーパーマルシェに寄って、水と飲むヨーグルトを購入。
マハミド行の切符(57DH)を購入。まだ時間があるので近くのレストラン(というか食堂?)でコーラを飲む。テレビのニュースでは9.11事件のことを放送していた。そうか、明日は9月11日。この日をイスラムの国で迎えるというのは結構複雑な心境だ。
1時10分くらいにターミナルへ戻ると、もうすぐバスが来ると言うので待つことに。やってきたバスは前回と同じ会社なので同じような形だが、よりボロくなっている。上には上が居たか。バスに乗り込むと、アブドゥル(本当にこの名前は多い)と名乗る男が積極的に話しかけてくるので、多少警戒しつつも話をする。顔では無く、雰囲気がどことなくセガールに似ている気がする。日本語をほんの少しだけ知っているようで、「アツゥイ、ツカレタ」などと言ってくる。バスは2時過ぎに出発。
バスの中は確かに「アツゥイ」。何せ通路にも人が居る。このバスが混むという噂は本当で、早めに来ておいて大正解だった。
エアコンなんてあるわけ無いし、狭くてひどく汚い。でもモロッコの生の風景を見られるというのはとても興味深い。飛び交うアラビア語、イスラム的な音楽、外に広がる景色・・・これでわくわくしないはずが無い。
アブドゥルがホテルは予約したかと聞いてくる。してない、と言うと、じゃあ俺のホテルを予約してやろうと言ってくるのでちょっと警戒したが、ホテルの名前を聞くと目星を付けていたところだったので、頼むことにした。考えてみれば、マハミドにはホテルが2件しか無いのだった。マハミドに着くのは夜になるだろうし、正直有難い申し出ではある。
しかしこのアブドゥル、意外と多彩な日本語を操る。「アツゥイ、ツカレタ、オンボロ・バス、カラテ、センズリ」・・・誰だ、センズリなんて教えたのは。俺の前に座っている青年に向かって「こいつはこれで"センズリ"している」などと言って新聞に載っている女の写真を見せてくる。アホだ。しょっちゅう握手を求めてくるし、胡散臭さはかなりのものだ。不安だ。途中から何故か席替えをし、件の青年がとなりに来た。ある程度は英語を話せるらしく、下手くそ同士で色々と話をした。こっちはアブドゥルと違って胡散臭さは微塵も無く、短い間ではあったが、お菓子を上げたり貰ったりもして、結構仲良くなれたような気がする。
バスが停止した。何かな、と思って外を見ると、なんと橋が壊れていて進めない。舗装されていない脇道を通って行くようだが、何故か3分の1くらいの乗客が降りて橋の下を歩いて渡り始めた。俺も降りてみようかと思ったが、置いてかれる可能性を考えてやめた。脇道をゆっくり通り終えたとほぼ同時に、降りた客も無事バスに戻ってきた。アヴドゥルも降りた客の1人で、戻ってきてから俺に「歩けば良かったじゃないか。死ぬかもしれないぞ、インシャラー(モロッコ人は本当にインシャラーという言葉が好きだ)」といって笑った。冗談だとは思うが、このヤクザな脇道を通ったあとではあまり笑えなかった・・・。
何事も無かったかのようにバスは走り、だんだん外は暗くなってきた(というかバスの中も)。本当に小さな集落でもバスは止まり、1人や2人の客を乗せたり降ろしたり。ここがCTMと大きく異なるところで、民営バスの便利でもあり不便でもあるところだ。ただ時間に余裕があるのなら、こっちのほうが面白いことは間違いない。快適さとは程遠いが。
アブドゥルが、マハミドまでランドローバーで連れて行ってやると行ってきた。彼はザゴラ付近で降りるのだろう。タダというのが不安ではあったが、道も分からないので乗せてもらうことに。名残惜しくはあったが青年に別れを告げ、バスを降りる(彼も心なしか寂しそうだった)。俺の他にもフランス人の2人組が3組、計6人居た。また俺だけ1人だ。
照明の無い真っ暗な道をランドローバーはものすごいスピードで走る。月がとても幻想的に光っていて、思えば遠くに来たもんだとしみじみ。バスの中でフランス人と少し会話をするが、英語力の無さからあまり弾まず。やれやれ。
そしてついに、マハミド着。地面はもうサラサラの砂だった。サハラ砂漠はすぐそこだ。とりあえず荷物を置いて、夕食。フランス人2人と同じテーブルになった。日本語で食べ始めるとき何か言うのか、と聞いてきたので教えてあげて、「イタダキ・マス」。色々話をするが、もう少し英語を話せたらなあ・・・と思わずにはいられない。フランス人のくせにかなり英語が上手くて驚いた。
食後アブドゥルに呼ばれ、行ってみるとツアーの売り込み。本当はマハミドの近くをうろうろするだけでいいかなと思っていたが、らくだで砂漠に行って一泊という簡単なツアーが350DH。値段も悪くないし、何よりテントで一泊というプランに惹かれて、行ってみることにした。そろそろアブドゥルを信用しても良いんじゃないかと思えてきたし。冷静に考えてみれば、彼にはかなり助けられている。
色々手続きをしたあと、ホテルの部屋へ。まぁ、50DHという「値段の割りには」悪くない。新築の匂いがするが、外見は全く新しくない。疲れたしもう寝ようと思ったらドアを叩く音がするので、開けてみるとさっきのフランス人。ミントティーを飲まないか、と言ってきたが、あまりに疲れていたので丁重に断った。今思うと付き合うべきだったと思うが、かなり疲れていたのは事実だ。ベッドに横になると、すぐに寝てしまった。